福岡地方裁判所久留米支部 昭和35年(ケ)52号 決定 1963年3月26日
決 定
久留米市宮ノ陣町若松六八〇番地の一
競落人
緒方スエヲ
右の者昭和三五年(ケ)第五二号不動産競売事件につき別紙目録記載の不動産に対し、最高価格金七四、三〇〇円にて競買申出をしたので当裁判所は左のとおり決定する。
主文
本件競落はこれを許さない。
理由
本件記録によると競落人は昭和三八年二月二八日の本件競売期日において、神沢敬人を代理人として、別紙目録記載の不動産につき競買の申出をなし、最高価競買人と定められたことを認めることができる。
ところが当裁判官が右競売期日において、立会つた際には、右不動産に対する競買人なく、執行吏黒岩強祐は、競買人無き旨告知したのである。(裁判官が不動産競売期日に立会う権限があるかは疑問であるが、不動産の競売はあくまで裁所の管轄に属し、執行吏は裁判所の競売実施の命令にもとずき裁判所の補助機関として行うのであるから、権限が全くないものと断定することはできないであろうし、また現実においては競売手続に競売ブローカーがかつやくし、競売手続の公正がみだされているのは、当裁判所に顕著な事実であり、かゝる現状にあつては、競売手続の公正を保障するため、裁判官が立会うのも己むをえないものと解する。)従つて本件競買は民訴法第六六六条第一項に違背したものであるから競売法第三二条、民訴法第六七四条第二項、第六六二条第七号により、競落を許すべきではないことに帰する。以上の次第で、主文のとおり決定する。
昭和三八年三月二六日
福岡地方裁判所久留米支部
裁判官 白 井 皓 喜
物件目録(省略)